おんじゅん道 読書:シアター! 忍者ブログ
日々のあれこれを書いてます。
(恐れ入りますが こちらでは管理人のことはおんじゅんと呼んでください)
カレンダー
08 2024/09 10
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30
最新コメント
[12/21 あん]
[11/27 ぷりん]
[11/03 ヨーコ]
[11/02 びんにじ]
[10/03 びんにじ]

counter
[40]  [39]  [38]  [37]  [36]  [35]  [34]  [33]  [32]  [31]  [30
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


シアター! 有川浩


 売れない小劇団がとある事情で300万円の借金を抱えてしまうが、貧乏劇団(当然劇団員も貧乏)に返却するあてなどない。そこで主宰の春川巧が泣きついた先は、幼いころ自分が唯一心を開ける子供だった兄、司。
 しかし、司は自分の生計すら満足に支えられない業界に浸かりきっている弟の身を案じ、どうにか足を洗わせたいと願っている。とはいえ、弟の必死の願いもむげにはできない。そこで、一計を案じ、条件を出したうえで300万円の融資を約束する。

 条件は・・・

 貸した金300万円を2年間で返却すること、さもなくば劇団を畳むこと



 一気読みしてしまいました。読後感も楽しい気分です。
 だからって人に勧められるかどうかは別問題。

 もしあなたが有川のファン(図書館戦争以降)だったら、文句なくお勧めの一冊。
 有川に興味があって、手っ取り早くどんな作家なのかを知りたい人にもお勧め。
 暗い話は厭、楽しいだけの話が読みたいという方もいいと思います。

 それ以外の方には正直お勧めできないです。

 「楽しく読みました」と言ってる読者が書くとは思えない辛口のレビューなので、つづきは畳みます。




 なんてことない話です。山も落ちもない話。
 普通の人はお話の舞台である「演劇業界」に興味すら持ったことがないでしょうから、へぇ~~~と感心する場面は多々あります。が、うんちく本としては内容が薄い。だからといって、小説として面白いかと尋ねられたら、つまらんとばっさり切り捨てます。
 それなのに、最後まで一気に楽しく読めてしまったのは、有川のテンポの良い文体と、登場人物の魅力によるものかと。つまりは有川マジックです。いいようにしてやられました。


 主人公は借金を肩代わりした、春川司(劇団シアターフラッグ主宰 春川巧のお兄ちゃん)。
 有能な男で、仕事に関しては他人にも自分にも厳しく、筋を通し、公明正大。なのに、一途に何かに打ち込む者に思わず手を差し伸べてしまうお人好し・・・ってのは、有川にお約束のように登場するキャラです。 塩の街の秋川、海の底の夏木、図書館戦争の堂上。

 周りを取り囲むキャラも人懐っこい弟、劇団に心酔して入団してきた千歳、千歳に嫉妬する牧子、牧子さん大好きの石丸・・・

 これらの人々が借金まみれの劇団を黒字にしようと四苦八苦するわけです。
 主人公たちが向かうベクトルが同じだからかもしれないけど、登場人物同士のいがみ合い、ねたみ、喧嘩、そういったものは皆無。なかよしこよしです。
 それらしいことをほんのりにおわせる部分もあるけど、自分の心にある妬みを自分を高めるためのエネルギーに変えてしまう、どこまでもポジティブな人たちです。

 あり得ない、おとぎ話の世界。
 どろどろが全くないので読んでいて、こっ恥ずかしいくらいすがすがしいです

 希望を言えば、この物語は劇団が空中分解(借金を抱えることになった事件です)するあたりから、がっつり書いてほしかった。

 能天気な弟、巧も自らの劇団の最大の危機にどん底に落ち込んでほしかったし、空中分裂の原因になった新人女優千歳にももっと自問自答してほしかった。劇団を危機に陥らせた新人女優に周りはもっと冷たく当たってもいいし、なにより、債権者であるお兄ちゃんと、劇団員の間で、激しいいがみ合いがあるはずだ。お兄ちゃんは劇団にやってきた黒船だったのだから。

 そんな苦難を乗り越えてた上での物語だったら、ラストで劇団が手に入れた成功を読者も本当に喜べるのに。


 最初から最後まで絵空事でした。
 でも、ドロドロがなかった分、すがすがしかったし、楽しかった。
 仲良しなキャラがうらやましいくらい楽しくて、見ていてほほえましかった。

 きっと有川はこれでいいのかもしれない。
 複雑な人間関係の話だったら、他の人も書くしね。


 それでも、海の底を超えるお話が一向に姿を見せないのを心さみしく思うのです。
 
PR
この記事にコメントする
お名前
タイトル
文字色
URL
コメント
パスワード Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
忍者ブログ [PR]