■ 【読書】水を打つ

本はそれなりに読んでいたのだけど、何となく感想を書きそびれていた。
年末にツイッターで紹介されていて、早速読んだ本。
私個人的には待望の競泳もの。


水を打つ　堂場瞬一（実業之日本社）


競泳自由形の日本記録を持つ矢沢大河は、前回の五輪の４×１００ｍメドレーリレーでは僅差でメダルを逃がし、雪辱を期している。そこに現れたのが高校３年生の小泉速人。不穏当な言動で選手の反発を買う小泉は、新型水着「ＦＳ‐１」を身につけて好記録を叩き出す─個人競技におけるリレーとは何か、ツール（水着）とは何かを迫真の筆致で描く問題作。（「BOOK」データベースより）

折りたたんだ先は、感想だけどネタばれ。
読む予定のある方はお気を付け下さい。

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北京オリンピック直前で起こった、レーザーレーサー問題をベースとした作品であることは明らかで、普通のスポーツものが選手中心の話になる中、この話は水着開発メーカーの技術者が重要な役どころを担うのが特徴。

今まで読んだスポ根ものの多くは女性作家の作品だったから、男性が書くとこうなるのかぁと思いながら読んだ。
執筆にあたっては綿密に、丁寧に取材をしたんだろう、作中に登場する水着問題も本当にそんな話があったんじゃないかと錯覚させるほどに現実味を帯びている。
多くの女性作家が登場人物の心情描写に重きを置くのに対し、この作家は理論的にきっちりと物語を進めていく。登場人物たちが泳ぐ描写もあたかも自分が泳いでるような感覚にさせられる。

と、舌を巻いた上巻だったが、下巻にはがっかりだった。

この話の影の主人公は、天才と呼ばれ、新型水着「ＦＳ－１」を着用しオリンピック選考レースでは世界新記録を出した大学１年生小泉（平泳ぎ）。
しかし、周囲に心を開かず、逆に反抗的な態度を取り続けるあまり、チームの中でも完全に浮いてしまった彼が、オリンピック直前に調子を崩し、立ち直れないままに本番に向かう。

複雑な過去を持つ小泉がメドレーリレーメンバーに心を開き、最後のレースに向かうのだが、彼が心を閉ざした経緯や、みんなに受け入れられる過程が余りにも雑に扱われ、そこが物語の核だというのにがっかりだった。
水着問題を丁寧に書きすぎた故に、下巻で無理矢理まとめちゃいましたって感じだった。
物語は長くなるが、上中下の３巻にすればよかったのに。
できるはずだろうに、本当に残念だ。



ところで、この本を読んで、スポ根ものには一定の条件があると確信した。

結論：スポ根ものには、繊細で精神的に脆い天才の１０代少年が必須。

バッテリー、ＤＩＶＥ、風が強く吹いている　スポ根ものには主役であろうと主役でなかろうと、上記条件を満たした少年が重要な役どころで登場する。
この本であれば小泉速人がそれに該当する。

この話が映画化される折りには、小泉を演じるのは林賢人で決まりだろう。
がんばれ、林君！